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人生の脚本@「復活」「カノン」
2012/01/05(Thu)23:59

「芝居の脚本は演出家が書いてくれますが、自分の人生の脚本は自分で書くしかありません。」

『復活』で一番印象に残っているのが、シェンボック@壮(一帆)さんの発するこの台詞だ。
勿論、芝居の主筋を成すのは、ネフリュードフ公爵@まゆさん(蘭寿とむ)とカチューシャ@蘭ちゃん(蘭乃はな)の恋物語なわけだが、登場人物の生き様を一言で表現するなら、シェンボックのこの台詞に尽きると思う。
でも、自分自身の人生なのに、自分で脚本を書くのって本当に難しいし大変なことだ。登場人物達が書いた「人生の脚本」は、完全なハッピーエンドでも、どうしようもないバッドエンドでも、どちらでもない結末を迎える。…現実は、得手してそんなものなのかもしれない。

私はロシア物と聞くと何故か血が騒ぐ習性の持ち主で、今回のお芝居では幕開きからその空気感にものすごく引き込まれた。ミハイロフ警備隊長@だいもん(望海風斗)君の歌声が『復活』の世界への先導役のようなもの。この人の声あってこそのシーンだったと思う。
そして、本編。現在、過去、現在、そして未来へ、という形で進んでいく物語は、実は突っ込みどころが満載だ。私はまだ読んだことがないが、原作もそうなのか?時間ができたら近いうちに読んでみたい。
(↓心の声の一例)
・ちょっと待った、カチューシャとロマンティックな一夜を過ごした後、「あって困るものじゃないから」と100ルーブルを渡して、その後何のフォローも無し?いくら軍に戻らないといけなかったと言っても、カチューシャに手紙を書いたり、家の人達に様子を尋ねたりもしなかったの?そりゃ酷いよ、公爵…まさに若気の至り。
・何でいきなり、革命家シモンソン@みわっち(愛音羽麗)さんがカチューシャに結婚を申し込む流れになった…!?
(↑心の声はとりあえず胸の内にしまってみる。)
…から始まって、他にも色々ある。よくよくじっくり考えると、納得できなくもない部分も出てきて、奥が深いというか、色んな解釈ができる作品だ。
そして、周囲を固める登場人物達の台詞が、さりげなくずしんとくる。「優先順位をつけるとしたら…何をおいてもまず、自分を一番大切にね。」というイワノーヴァナ伯母@京三紗さんの台詞とか、「ドミトリーは、自分の魂を救いたいだけなのよ。」という主人公の姉君ナターシャ@初姫さあやさんの台詞とか、その最たるもののような気がした。

ここでがらりと視点を変えて、ミーハーにときめいたシーンの話でも。
・ええ…説明が要らないくらいお約束なチョイスだとわかっていても、それでも書こう。ドミトリー@蘭とむ氏がカチューシャ@蘭ちゃんを小屋に呼び出して口説くシーンは、すごくいい。問答無用でときめく。そしてその分だけ、翌朝の展開から受ける衝撃がメガトン級。
・作品中に出てくる、もう一組のカップル、シェンボック@壮さん&アニエス@月野姫花ちゃんの爽やかさというか、小粋さが非常にいい味を出している。うまくバランスが取れたカップルで、ああ、いい相手を見つけたなあという感じ。パリ・オペラ座のダンサーだったというアニエスの設定が生かされた、パーティーの場で思わず披露してしまう生き生きしたダンス&表情も素敵だった。アニエスという役に、姫花ちゃんの個性的な声がまたうまくはまっていたのでは。卒業公演での魅力的な演技を堪能させて頂いた。
姫花ちゃんを含め、今回の公演では花組の中堅〜若手スターが何人も退団してしまう。毎回、どんな役を演じてくれるのか楽しみだっただけにとても寂しいけれども…卒業公演、東京の千秋楽まで素敵な宝塚人生を…!

最後に少しだけ、ショーの話も呟いておく。
実は今回の『カノン』で一番印象に残っているのが、蘭寿とむ氏&蘭乃はなちゃん&壮一帆さん&実咲凛音さんの四人で踊られた、あのデュエットダンスだった。人事的には賛否両論あるのかもしれないけれども、個人的にはあの二組のデュエットダンスは秀作だと思う。青と紫のグラデーションのお衣装で、画面的にもとても美しかったし、今の花組さんだからこそ映えた演出だった。
何というか、上手く表現できないのだが、「これから成長していくので見守ってね!」ではなくて、「練り上げたこの芸を、さあどうぞ」と言わんばかりの、互いにしっかりとした芯を持つトップ&二番手コンビ。五組ある中に、やっぱりこういう組があるのは嬉しい。
そして、そのデュエットに続く形で、男役の燕尾の前に、蘭寿とむ氏&朝夏まなと君が重なるような振りで踊るところも象徴的な作り。朝夏君の宙組への組替えは、春の全ツが終わってからだが、送り出す意味もあるんだろう。本当に目をひくダンスをする人だけに、ショーでのこういう使い方はいいなと思う。


投稿者:RK|カテゴリ:花組

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ONE FOR ALL, ALL FOR ONE@三銃士
2011/08/11(Thu)20:27
折角飛行機が成田経由だったので、気になっていた東宝版「三銃士」のマチネ公演を観てきた。
驚いたことに、帝劇に何と銀橋もどきが出現している…!なんていう驚きもありつつスタート。

総評としては、曲はかなりいいのに、勿体ないことに訳詞があまりぐっとこない印象だった。いや、まあ確かに向こうの言葉を日本語に訳したらああなってしまうのは納得できなくもないが、三銃士の歌で『一人はみんなの為に みんなは一人の為に』と繰り返すと、何ともくさいというか、子供っぽい仕上がりになってしまう。程よく外国語を残しておくのも手だったのでは。
とはいえ、今回の銃士隊メンバーはみんな歌声が素晴らしいので、はもりで歌われると問答無用で感動に誘われる。

他に感じたことをいくつか。
・枢機卿@山口祐一郎氏の歌う、礼拝堂での一曲目のソロ。ソフトな歌い方で美しい。後半の鎧姿でのマント捌きも流石でした。
・マント捌きといえば、枢機卿の腰ぎんちゃくもとい親衛隊ロシュフォール@吉野圭吾さんも流石。枢機卿にどこまでも心酔して懐いているロシュフォールさんに、何となくダンスオブウ゛ァンパイアのヘルベルト君を思い出した。黙っていれば格好いいんだけど変な人の役作り、やっぱり似合いますな…!ミレディ@瀬奈じゅんさんと責任のなすりつけあいをしている姿は何だかかわいい。
・そのミレディは、単なる悪女設定ではなく、かつて濡れ衣でリリスの烙印をおされてしまった悲劇の人。八方塞がりの状態からあの手この手で足掻いた結果に待っているものは、やっぱり苦い。アンナ・カレーニナの時も思ったが、瀬奈さんの追い詰められた演技のエネルギーはすごい。ミレディのお衣装は何パターンかあるのだが、どれもフォルムが綺麗で好みだ。戦うシーンの付近でミニスカートで登場した時には、また演出の山田和也氏の趣味?と思ったりもしたけれども。
・ミレディと、アンヌ王妃、その侍女コンスタンスが三重唱で歌う曲や、国王ルイとアンヌ王妃が二人で歌うすれ違いの歌も美しい。
・劇中のところどころに散りばめられているお笑い要素もこのミュージカルの特徴だ。結構面白いんだが…観客の笑いのツボによるかなあというのと、場合によってはシリアスなシーンと混ざってぶつ切れな印象になりかねなくもない。

投稿者:RK|カテゴリ:その他ミュージカル

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新生花組・蘭とむ's『ファントム』
2011/07/18(Mon)21:07

非常に語呂のいい、2011年・花組版ファントム。
まずは蘭寿とむさん、トップお披露目おめでとうございます!
もう随分昔のことのように思える去年の九月、三軒茶屋の人見記念講堂の蘭寿とむコンサートでの雄姿を思い出す。ああ、主演としてセンターに立つ人のパワーってこういうものか、と圧倒されたあの頃、蘭寿氏は宙組の二番手さんだった。あれから故郷の花組へ組替えし、凱旋トップ就任した蘭寿氏。
でも、蘭寿氏の持ち味からは、お披露目がファントムというのは正直意外だった。ロイドウェバーの『オペラ座の怪人』とはまた別物だが、ファントムの元ネタは、つまりそれだ。オペラ座の地下に住む、顔は醜いけれども音楽を愛する心はとてもピュアな怪人が、素晴らしい声を持つ一人の少女に恋をする話。どちらかというと陰性な主人公に対して、蘭とむ氏の元々のイメージはすこぶる陽性だ。まあ確かに、陰性のキャラクターといえば『エリザベート』新人公演のトート閣下も演じておられるわけだけど。
そんなわけで、完成図の想像が中々できなかった新生花組のファントムを、ようやく役替わり2パターンとも自分の目で観劇することができたので、所感など。


・ファントム@蘭寿とむ氏率いる従者のダンスは非常にキレが良くて格好いい。そしてそこに絡む、チュチュ姿の娘役さん達のダンスもとても素敵だ。舞台上で白いチュチュを素早く舞台上で黒いチュチュにチェンジするのもまた良い。このシーン、蘭寿氏に絡むバレリーナ@花野じゅりあ嬢の色気が素敵。
・『ファントム』に合わせてだろうか、蘭寿氏の歌い方が、今までと違っていた。持っていた癖のようなものを、あえて削ぎ落とそうと臨んでこられた印象…ファントム役には確かに良い選択だったと思う。音を伸ばす時に力んでしまうのをうまく処理出来れば、更に良かったかも。
ただ、フィナーレあたりで、ファントムとしてではなくトップスター・蘭寿とむとして思い切り気持ちよく歌う姿の生き生き感も私は好きだ。
・脇を固めるキャラクター達がとにかく作りこまれている。コーラスも重厚なので、大勢口のシーンは楽しい。そんな中でも、今回のMVPはずばり、カルロッタ@桜一花ちゃんだと勝手に私は思っていたりなんかして…面白さと憎めない毒々しさに満ち溢れたカルロッタは、芝居巧者である一花ちゃんならでは!初演・再演のタキ(出雲綾)さんも凄かったが、全く負けていない。
・カルロッタ@一花ちゃんの従者、ヴァレリウス@初姫さあやちゃんも非常に面白い。麗しのサブリナの時のおばあちゃんな使用人役の時も思ったが、この方も非常に芸達者だ。むしろ、『ファントム〜カルロッタと愉快な仲間達〜』とかいう外伝を延々と観てみたいと思わせる何かがある。
・愉快な仲間達のうちの一人、カルロッタの旦那様にあたるオペラ座の新支配人アラン・ショレは今回、みわっち(愛音羽麗)さんとみつる(華形ひかる)氏の役替わりだ。役作りがそれぞれ全く別物で、みわっちさん版はとにかく盲目的にカルロッタにベタ惚れなかわいいおじちゃん。そしてみつる氏版は、カルロッタと似た者同士の、「いやお似合いだよ…色んな意味で」というアクドイ部分プッシュなおじさま。どちらもすごく楽しめた。これ、映像化する時にほんとにカルロッタ&アラン・ショレアングルを作るべきだと思うぞ、切実に。特に好きなのは、カルロッタにお衣装を見せられたショレが「すごくいいよ、ダーリン。まるで春、いや、春になる前の…(延々)…つまり冬だ!!!」の部分。ああっ、そんなに一生懸命おだてたのに締めの台詞でカルロッタの周りの空気が真冬になっている…!
・チーム・カルロッタで忘れてはいけない、早々にお亡くなりになってしまう衣装係ジョセフ・ブケー@天真みちる君。やはり非常に芸達者だ…死体として登場する時なんて、本当に全く瞬きをせずに死体役として固まっている。カルロッタ様の命令で地下に来てしまっただけなのに、ファントムのお顔に恐怖して転落してしまった彼が、非常に憐れだ。…ところで、一幕で早々にお亡くなりになった後、天真君の出番は如何なことになっているのだろうか。
・もう一人、チーム・カルロッタとはまた別だが、何となく気になる存在…ルドゥー警部@まりん(悠真倫)さん。相変わらずこの方も芸達者なおじ様役者だ。そしてやっぱりヒゲ部。こういう上級生がいることが、花組の層の厚さを物語る。
・そして、オペラ座の団員の皆様。かつて花組で上演された時、まっつ(未涼亜希)氏がこのくくりだった。三人組の一人、リシャール役で、劇中劇でものすごく大きなお衣装を着けて、金髪ロン毛のオーベロン様役をやっていた。といっても、新参者の私は生では観たことがなく、ブルーレイ観劇のみなわけだけれども…それでも、まっつ氏の美声オーベロン様は旧花ファントムBRの見どころの一つだと私は思っている。そんなわけで、今回もオーベロン様を演じるリシャール@だいもん(望海風斗)氏がとっても楽しみだった。だいもん君と言えば、まっつ氏と共に出演した桜乃彩音ちゃんのミュージックサロンでも、素晴らしいクオリティを見せつけてくれた人。歌唱力には定評がある。今回のオーベロン役、歌うフレーズは短いけれど、彼はまさしく『妖精の王様』だった。ナウオンで大きいお衣装に見合う大きさを!というようなことを話しているのを聞いたが、だいもん氏のオーベロン様は、太陽の妖精王という感じ。(cf.まっつ氏のは夜だけ姿を見せる、月光の妖精王という感じだった。どちらも持ち味が輝いていて良い!)そして、非常にマイナーな注目ポイントだが、クリスティーヌの喉が毒薬にやられてしまった後、クリスティーヌを救い出しに指揮台から舞台へやってくるファントムと、だいもんリシャールは一瞬戦って跳ね飛ばされている。かつてのまっつリシャールの時は、彩音ちゃんクリスティーヌをかばおうとはしていたものの、オサさんファントムが近づいてくると警官隊にまっつリシャールのみ保護されて引き離されていたのに。こ、こんなところにも持ち味の違いが…!?
・リシャールについてばかり熱く語ってしまったが、三人組の中で一番格上なのであろう団員は、セルジョだ。今回は役替わりで、みつる(華形ひかる)君とまあ(朝夏まなと)君が演じている。クリスティーヌがまだパリに出てきたばかりの街娘だった頃に、歌を作って売っている彼女に初々しくモーションを掛けるセルジョは中々に爽やかな見どころだ。みつるさん、とてもあのあくどいアラン・ショレを演りきった人と同じ方とは思えない…これぞ役替わりの真髄(笑)とっても若々しく、とっても爽やかだった。そして、まあ君Ver.は、伸び伸びと演じているのが観ていても伝わってきて、オペラ座の花形団員ならではの華を感じた。一気にボンと上げるよりも、こういう役を積み重ねて育てていった方がいい役者さんなんじゃないか、劇団さま…とこっそり思う。太王四神記のチュムチ役で私は彼女を知ったのだが、その時から何か気になる華や演技力はある人だ。歌と重厚感は、やっぱり経験がものを言う…。
・役替わりの話をしたので、最後の役替わり、シャンドン伯爵について。この作品において、伯爵はファントムの恋敵なので、ファントムとは違う種類の大きさというか存在感が必要だ。みわっち(愛音羽麗)さんと、まあ(朝夏まなと)君が演じている。お二人とも伯爵を演じるのに必要な『華』の部分は、申し分ない。プラスアルファの部分がどう出てくるかな、と楽しみだった。
今回は、作曲のモーリー・イェストンさんがシャンドン伯爵にも新曲を書いていて、伯爵はその曲を歌いながら、「クリスティーヌを絶対探し出す!」と銀橋を渡る。短い曲だが、この伯爵の新曲はかなり私の好みだった。伯爵にはこの場面以外でも、何箇所か歌をかぶせてくるパートがある。欲張りかもしれないが、観客としての私は、やっぱり曲があるからには聞かせてくれる歌声を期待してしまう。そういう意味では、やっぱりみわっちさんの包容力抜群な伯爵が安心して物語に入り込める…かな。ファントムや従者との殺陣も上手い。
でも、まあ君の伯爵も銀橋を渡る場面の切羽詰った表情もとても良かった。新人公演でも同じ役をされていたそうなので、新公Ver.のまあ君伯爵も見てみたい気がする。ラスト、ファントムが亡くなったのを嘆くクリスティーヌを見守るシーンの表情にも、何とも言えない味が出ていた。歌で感情を伝えられるようになったら、この人は強いだろう。
・そして、そんなシャンドン伯爵とファントムの二人に恋をされるクリスティーヌ@蘭乃はなちゃん。正直に書くと、一回目に観た時と二回目に観た時、その一週間でまるで仕上がりが違った。私が座った席の音響の具合もあったのかもしれないし(一回目に観た時は、全体的にマイクトラブルがあったのか、多々雑音が入っては音量調整がされていたりもした)、その日の喉のコンディションもあったのかもしれないが、一週間で格段に成長があった。全編通しては些かハードルが高いにしても、どうしても押さえなければならないところは、ちゃんと聞かせる歌になっていた。東京千秋楽まで、蘭ちゃんクリスがどう成長するのか、一年ちょっと先くらいにあったらいいなーというCS放送で楽しみにしたい。
ただ、ファントムの素顔を見てしまった後の悲鳴は、もう少し要研究かも。
・そんなクリスティーヌと歌声が似ているというファントムのお母さん・ベラドーヴァ@芽吹幸奈さんは、今でも十分上手ではあるのだが、昨年の虞美人のけしの花の乙女で素晴らしい声を聞かせてくれただけに、もう少し歌声に透明感が出たらいいなと思う。絶望のあまりに狂っていく芝居は上手い。
・そして、この物語の核であるキャリエール&ファントム父子の同期コンビ。かつてオサさん&ゆみこさんという名コンビが歌っていった『お前は私のもの(You are my own)』が、この82期コンビVer.でどう魅せてくれるのか、この演目で私が一番楽しみにしていたと言っても過言ではない部分だ。
キャリエールを演じるえりたん(壮一帆さん)の持ち味と言えば、ありのままに爽やか、華やか、ドS…最後ちょっと別種のワードが入っているにしても、そんなイメージだ。でも不思議なことに、過去のCS映像を紐解くと、挫折して苦しんでいたりする、陰のイメージの役も良く似合う。前トップのゆう(真飛聖)さんとの芝居では、対等にそこに立つような役柄がぴったりだった。そして今回のまゆ(蘭寿とむ)さんとのお芝居で感じたことは…ああ、このコンビには同じ血潮が流れているんだな、ということだ。役柄ゆえにそう感じたのかもしれないし、上手く説明できないのがくやしいが、父親なんだと名乗る瞬間や、そのお父さんに向かってファントムが向ける絶妙な表情は、やっぱりこのキャスティングだからこそ生まれたものだと思う。お父さんに近づきたいけれども、近づいていいのか迷っているファントム、思わず苛立ちをぶつけてしまったことを謝るファントム、そしていつも息子を見守りながら、人間の弱さを抱え続けるキャリエール、それでも約束通りについに引き金を引き、その最期を見届けるキャリエール、どれも大好きだった。
蘭とむ氏はCSのトップスターロングインタビューでも、「初日、銀橋のシーンで抱き合った後、えりたんが涙を拭ってくれたのが嬉しかった」と言っていた…絆82期万歳!と叫びたい。人事的には色々複雑な面をはらんだ今の花組ではあるけれども、このお二人でファントム父子を見られたことを嬉しく思う。えりたんファントム&まゆさんキャリエールなんていう役替わりが見られるイベントデーがあったらそれも非常に気になるけれども、厳然たるスターシステムの宝塚では、残念ながらそんな企画はなさそうだ。

ところで。一本物のこの作品には、フィナーレとしてショーがついている。
フィナーレの最初、下手セリから上がって来て華やかにソロを歌うのはみわっちさんだ。そこから下級生のロケット、男役燕尾、デュエットダンス、パレード…などが続いていくわけだが、私はその間に、3回みわっちさんのウインクを目撃した!勿論、私が座っていた方角にしてくれたわけではない。が、とにかく一公演の短いショー部分の中に、少なくとも三回のウインクを盛り込むみわっちさんの心意気に私は感動した。…客席に幸せをくれるそんな貴方が大好きだ。
で、やっぱりふと思う…客席サービスとしては対照的なまっつ氏のことを。いつか、みわっち先輩なみにウインクを飛ばしまくるまっつ氏を見てみたいなーと夢を呟いてファントム観劇記の〆にするとは何事か…。


投稿者:RK|カテゴリ:花組

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映像には残らない、17日間@HOW TO SUCCEED WITHOUT REALLY TRYING
2011/07/17(Sun)23:59

ブロードウェイで天下のハリー・ポッターが、否、ダニエル・ラドクリフ君主演で上演されたこの作品『ハウトゥサクシード』(通称H2$)は、著作権の高さからか、CSニュースでのハイライト映像しか公式映像が残らない。元々、映像大好き派の私にはそういう企画はかなりがっくり…だが、待っていてもDVDは出ないので、覚えているうちに舞台の想い出(?)をメモしておきたいと思う。
いや、しかし。今からでも遅くないから、『やっぱり映像化著作権買っちゃいました』とかでもいいから、色んなキャラクターのアングルを収録したBRでも出しませんか、劇団さま。

予備知識として…前回の花組さん版の中古ビデオを買って来て観てみた数か月前。ビデオデッキに久しぶりにビデオをセットして、観終わった感想は…役者さんの努力の御蔭で面白い所は沢山あるけど、ストーリー自体はちょっと私の好みとは外れている…だった。それでも、個性的に作り上げられたキャラクターを、今回の雪組公演メンバーがどんな風に演じてくれるのかは楽しみで。

そして、その期待はもちろん裏切られなかった。
ちなみに私が観たのは二回。初回は7/10(日)のソワレで一階席の下手側から。そして二回目が千秋楽7/17(日)ソワレで、こちらは三階席から。
一回目の観劇が多分ノーマルバージョンで、千秋楽の方は、見事にアドリブが飛び交っていた。いい!千秋楽にはやっぱりこういうノリがなくては…!
そんなアドリブ大賞はやっぱり何といってもバド@チギ(早霧せいな)さんだろう。順不同で箇条書きにするだけでも、

・後輩フィンチ@(音月)桂さんに最初に意地悪するシーンでカメカメ波を放出→スミティ@愛加あゆちゃんがばっちりこのアドリブを受けて、くらりと倒れてくれた。あゆちゃん…!貴方はコメディに才能を発揮するタイプだったのか…!今後も是非その力を伸ばしてください〜スミティ面白かったし可愛かった!
・トゥウィンブル係長@キタ(緒月遠麻)さんとメールルームに登場するシーンで、背中におんぶ状態でくっついて登場。ええ、最初から一体だったんじゃないかと思うぐらいの見事な接着具合だった。また上着の色がまったく同じ鮮やかな赤なんだよなー…まさに郵便屋さんカラー。
・トゥウィンブルから係長の座を受け継ぐことが決まった後のシーンで、何とその特殊な前髪を受け継いでご登場。ええっ、そこなのか!?とどよめく客席。何ていいセンスをしてるんだ、チギちゃん…!
・ヘディ@かおり(晴華みどり)さんに差し出すチュッパチョップスが、ほんとに滅茶苦茶特大サイズだった。特注!?(笑)ヘディちゃんも思わず受け取ってから、いつも通りの台詞「ゲス!」。あああ、バド君の努力の結晶を受け取ったのに…!(笑)
・いつも通り、ミス・ジョーンズ@舞咲りんちゃんにちょっかいをかけたバド君。すげなく受け流され、「それだけ?」と残念そうに呟いたところ、ミス・ジョーンズが見事な腹ぶとん突き(こうとしか言い様が…(笑))で反応してくれていた。おめでとう〜。

他にもあったかもしれないが、とりあえずバド君に関わる印象的なアドリブはこんな感じだ。
そして、バド君以外のところでは。

・一幕で、トゥウィンブル係長の昇進を告げに来たブラット人事部長@まっつ(未涼亜希)氏のシーン。もはや定例となった90°のお辞儀と握手をしたトゥウィンブル@緒月氏は、部長の手を離さない、離さない、絶っ対に離さない…!ついに部長も同じ90°のお辞儀を返して、握手に終止符を打っていた。まっつファンの私としては、緒月氏、ありがとうと全力で叫びたい。人事部長役は、自分からはあまりアドリブでお笑いを取りには行けない役だからこそ、千秋楽のアドリブ祭りに引きずり込んでくれる緒月氏の機転と才能に心から感謝だ。
・二幕で、フィンチがローズマリー@舞羽美海ちゃんにしっかりハグ!普段の公演だとハグしてもらえないところなので、千秋楽に幸せの贈り物な感じだった。
・パーティーの場面で、ブラット部長@まっつ氏はモグラのプチぬいぐるみをピグリー社長@汝鳥伶さんに手渡され、はけるまでそれをラブリーに愛でていた。ええ、とってもお似合いですよ、部長!
・千秋楽付で卒業される涼瀬みうとさんの演じた役が、辞表を出して会社を去るところで、台詞の相手の男役さんから、白いお花が胸ポケットに…!でもエレベーターに乗るところで、はずみでお花が落ちてしまって、慌てて拾ってから乗っていた。もう少し後のシーンでも、退職パーティーと思われる集団がエレベーターから顔を出したりと、ところどころにじんとなる工夫が。
・こんな機会滅多にないからということで、ボーリング大会に行く前のシーンでフィンチをぎゅーっと長く長く強く抱きしめるミス・ジョーンズ@舞咲りんちゃん。ミス・ジョーンズのフィンチへの愛はがっつり受け止めた…!
・ブラザーフッドの歌の、「いい加減なやつ」のところでフィンチ@桂さんに引き出される部長@まっつ氏はいつも以上に足を突っ張って抵抗していた。そこにフィンチ氏の蹴りが(笑)

今ぱっと思い出せるアドリブはこんな感じ…?
CSの舞台レポートで、まっつ氏と緒月氏が「好き!やりたい!」と言っていたチアガールのシーンは、千秋楽でも普段通りのメンバーで、ロッカーから見慣れないお二人が飛び出してくることはなかった。ちょっと残念。いや、無理だとは思っていたけど、映像に残らないならいっそ千秋楽でやってしまえ!と思っていた私もいる…すみません。って、このシーンでわざわざチアガールさん達のお顔を全部眺め渡してしまったのは私だけじゃないと…思いたい…。

って、お芝居の本筋の話をしないで、ひたすらアドリブの話をしてしまった。以下、個人的な好みのシーンやらキャラクターやら。

・私はいわゆる一人の在野まっつスキーなので…今回の公演の目玉は、何といっても社長にゴマをするブラット部長@まっつ氏。いや、このゴマすりを冷たくあしらえる上司が居たら見てみたい…(贔屓目?)
・Mr.ギャッチ!ギャッチ@コマ(沙央くらま)さんが兎に角格好いい!女好きでついには社長の愛人ヘディちゃんに手を出して左遷されてしまう彼だが、仕事は出来るという雰囲気が全編通して非常によく出ている。特に、肝心のヘディちゃんを口説くシーンの「やめとけ、そんなやつ!」に惚れ直した。ベネズエラ勤務から是非返り咲いてくれ…!
・ヘディちゃん@晴華みどりさん、いいキャラだ…!お色気も憎めないぶっとび具合も文句なし。ブラット部長@まっつ氏が「NO TOY!」と言いながらも、手はわきわきしているのが良くわかる…。あの赤く光る警棒を持ちながら男性社員を通せんぼする部長のシーンは大好きだった。最後の決めポーズで、思いっきり抱きついてるのも、思い返せば実は、ヘディちゃんが初めて会社にやってくる初対面シーンからもう部長の声音がとってもスウィート兼ダンディーなのも非常にお気に入りだった。
・一瞬だけ副社長に任命されるシマリス出身のおじいちゃん@ひろみ(彩那音)さん。このかわいい生き物を如何にせん…!腰を曲げて歩いた結果、ブラット部長のヒップに頭突きを食らわすのも中々素敵だった。(あれは千秋楽のみなのか?)
・社員に辞表を書かせるシーンで、事あるごとにブラット部長の傍らで机の役をやってくれるにわにわ(奏乃はると)さん。公演期間中、本っ当にお疲れ様でした。ブラザーフッドの歌で「何の役にも立たない奴」呼ばわりされていますが、貴殿は非常に美味しく役に立っています…。ヘディちゃん出演・会議のシーンでも、ミス宝探しの放送を眺めるシーンでも、人事部長を陰日向に支えてくれてありがとう。
・重役用洗面室のシーン、三分間のストップモーションがほんとに格好良かった。
・”I believe in you"の歌を歌う、フィンチ@桂さん&ローズマリー@美海ちゃんのデュエットがとても綺麗。バラード好きの私にはたまらない。
・だけどやっぱり最後まで納得できないんだ…フィンチがいきなりローズマリーとの恋に目覚める理由が、脚本的にどうしても。
・ラストにちょっとだけついているショー部分。ソフト帽で踊るまっつ氏のダンスは、ビバ・花組育ちだった。ファンの欲目を差し引いても絶賛!

そして。
千秋楽挨拶で、退団者の涼瀬みうと君に沢山見せ場を作って、自身のマイクをちょっと外して、みうと君ご本人に話させてあげていた桂さんの心づかいに乾杯。いいトップさんだ…!
そして、三回目くらいに幕が開いた時、トップさんが毎回マイクのコードを着脱するのは大変、とスススッとピンマイクを差し出したまっつ氏にも乾杯。桂さんが「ありがとうございます、部長」と言ってくれました。
退団された涼瀬みうと君は89期。発売されたばかりのグラフの同期紹介で、涙もろい人やマメな人にランクインしているお方。千秋楽挨拶も、発してくれる言葉自体は短いけれど、何だかとてもじんと来た。卒業後もご多幸をお祈りしています。


投稿者:RK|カテゴリ:雪組

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後ろを振り向かずに@『MITSUKO』
2011/05/29(Sun)23:51
マテ・カマラス氏共演でも話題になった、とうこ(安蘭けい)さん主演ミュージカルの、中日劇場千秋楽を観てきた。
結論からいくと、ストーリー的には結構ずしんと重いミュージカルだ。何しろミツコの旦那様であるマテ氏の役が一幕でお亡くなりになってしまうなんて、ちょっと予想外だった。親戚一同からのいびりや、徐々に離れていく子供達のシーンは…如何にブラックユーモアを織り交ぜても、リアル過ぎるほどにリアルな流れで。ああ、史実を元にしたミュージカルはこうなるんだな、と思った。
テーマは重いけれども、非常に意欲作だし、確実に観客の心に何かを訴えかける作品だ。

スカーレット・ピンパーネルの作者、フランク・ワイルドホーン氏の楽曲ということで、楽曲にも期待が高まる中、一番心の琴線に触れたのが、ミツコ@とうこさんが歌う『後ろを振り向かずに』だった。劇中で何度か歌われるが、一幕で夫を励ます時に歌う回でいい曲だなあと聞いていたのが、二幕で年老いたミツコが息子を見送る時に歌う回では容赦なく泣かされた。『神様は扉を閉める時、窓は開けておくのよ』というワンフレーズが特に大好き。作品の中で、ある意味『救い』を与えてくれるワンフレーズではないだろうか。

マテ氏は今回、どうやら喉の具合があまり良くなさそうだった。でも、客席に訴えかけてくる舞台アピールは流石というほかない。中日から少し間をおいて始まる東京公演では、彼のベストの声が戻ってくると良いなと思う。
ミツコ夫妻の息子リヒャルト役は、今回ダブルキャストで、私が観たのは辛源君の回だった。ハーフの方だそうで、そのことを盛り込んだラストの舞台挨拶にウィットがきいていた。劇中でも、年上の大女優に熱をあげる若者ぶりが良く出ていた。
その大女優役のAKANE LIVさん(宝塚時代は神月茜さん)は、とにかく大人っぽい妖艶な美女。低めの声も心地良く、今後の活躍も楽しみだ。
ミツコの母&二幕で出てくる記者役のハマコ(未来優希)さんは相変わらず名歌手で芸達者だ。本役以外のアンサンブルシーンでも、何となく姿を見つけてしまうのが不思議。
もうお一人、昨年四月に宝塚を卒業された大月さゆさんが、日本人留学生の役で舞台進行に関わっている。歌声はちょっと細かったけれども、役柄をしっかり掴んでいた。

投稿者:RK|カテゴリ:その他ミュージカル

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